Blog.おにぎりたまごうぃんなー

Suzuki Yuki@s12bt おべんと箱みたいに色々つめこみたい。仕事とかデザインとか料理とか好きなもののことを書きます。

苔キーキャップの作り方


苔キーキャップとは

CherryMX互換スイッチで使用できるArtisanキーキャップを作りました。苔が生えている風景をキーキャップの中に閉じ込めています。
苔キーキャップ v1 - おにたま屋 - BOOTH

まずはキーキャップの作り方

基本的には
1. 完成形の形(原型)をつくる
2. シリコンで複製用の型を作る
3. 複製用型に材料を入れて固める
の流れです。

www.youtube.com
L2K Adapterを使用したシリコン型取りと、レジンでキーキャップを作成している動画です。苔キーキャップもL2K Adapterを使用して型取りを行っています。
あとは@hdbxさんの記事が素晴らしいので、これを見ればキーキャップは作れる!!
hdbx.hateblo.jp
hdbx.hateblo.jp

苔キーキャップ(ver.1)はどう作っているか

基本的には上のキーキャップの作り方の流れと同じですが、+αいろいろ手を加えています。
工程が少し大変なので、現在改良版(ver.2)の試作を行っています。ここではver.1の作り方を紹介していきます。
(Amazon商品リンクは実際に使用しているものを貼っています。またアフィリエイトリンクになっていますが新しいキーキャップ作りに使用させてください)

原型作成

Fusion360でモデリングして3DプリンタでPLA出力後、熱溶解積層型プリンタ特有の積層痕を消すためにタミヤポリパテ、サーフェイサーを使用して表面を滑らかにしています。
サーフェーサーで終わらせてしまうと、シリコン型でレジンを固めたときに表面が曇りガラスのような仕上がりになるのと、原型の表面が傷つきやすいままなので、クリアスプレーを吹いたほうがよさそう。




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シリコン型作成

シリコンで、上型(キートップ側)と下型(ステム側)を作ります。
キーキャップ作成時、通常は上側にレジンを入れて下型を被せるのですが、苔キーキャップは上型に穴を開けて、上型の上からレジンを流し込むようにして作成しています。


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下側を被せる方法だと土部分と苔部分に含まれた気泡の逃げ道がなく、透明レジン部分に気泡が多く発生してしまったためです。上型側からレジンを注ぎ込む方式だと、気泡を抜くための調整をなんとか行うことができます。

穴を開ける方法としては、上型を作成してからカッターで穴が空くように切り取るとシリコン型が壊れやすくなってしまうため、上型作成時にキートップギリギリでシリコンを流し込むのをやめて、上型から原型を外したときにちょうど上部に穴が空くようにしていました。


工作マット下側にあるのが、下型と穴の空いた上型

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UVレジンを使用して造形

造形時にこれらの素材を使用しています

  • UVレジン
    • 二液性エポキシレジンに比べ、気泡は出やすいけど、とにかく早く固まるのが嬉しい
  • 土部分
    • 使い捨てカイロの中身とUVレジンと混ぜたもの
    • 自然の土をそのまま使用するのは衛生面や劣化の面で気になったので、主成分が鉄粉のカイロの中身を使用しています
  • 苔部分
    • ジオラマに使用されるカラーパウダー、カラーモスなど何種類かをUVレジンと混ぜたもの
  • その他
    • ジオラマに使用する小石、観葉植物用のバークチップなど

PADICO パジコ UV-LEDレジン 星の雫ハードタイプ 25g 2本セット

ステム部分と、スイッチと触れる部分の保護部作成

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UVレジンは紫外線によって固まるため、不透明な素材を固めるのにあまり向いておらず、カイロの中身と混ぜるとそこまで強度が出ません。そのため強度が必要なステム部分の作成と、下型のスイッチ部分に触れる部分の薄いコーティングを、着色していないUVレジンで行います。

大地と植栽

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下型に上型をセットし、上からカイロの中身とUVレジンを混ぜたものを詰めていきます。UVレジンとの配合量によっては固まりにくくブヨブヨになってしまうので、「照明にかざすと光が透過するのがわかる」くらいの配合量を「少しずつ盛って固めてを繰り返す」のがよさそうです。

大地部分ができたら、上型を外し、苔やその他の素材を盛っていきます。

前述で作成したステム部分に気泡が入っていないかどうかを確認するため(この後工程までやったあとに気泡が入っているのがわかるとすごくショック)、このタイミングで下型も外しステム成形がうまくいっているかを確認していましたが、まだ全体の強度が弱いため苔を盛っていく作業が少し大変です。
ステム作成が安定してきてからは、下型を外さずに後工程まで行っていました。

透明レジン流し込み

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苔の植栽が終わったら、再度上型をセットして上から透明レジンを流し込んでいきます。
気泡と戦う場所です。UVレジンは粘土が高いので、そのまま注いでいくと苔部分から大量の気泡が発生します。そのため、エンボスヒーターなどでUVレジンを加熱し、粘土を低くしてサラサラにした状態で流し込んでいきます。温めたレジンは、苔と苔の間にスルスルッと溶け込んでいくので、大きな気泡を避けることができます。
UVレジンは可燃性の素材のため加熱には十分気をつけてください。また匂いが出るので換気も必要です。
それでも目立つ気泡が出た場合は、UVレジン用の調色スティックなどを使用してすくい取ります。

気泡発生防止に、苔部分に薄くレジンを伸ばして一度固めてから再度温めたレジンを注入する方法なども試していますが、1度目と2度目の硬化の境目にクラックっぽい気泡が入ってしまうこともあり、試行錯誤が必要だなぁと思っています。
あと、気泡も味だなと割り切る心で。

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表面補正



型から取り出したところ

注ぎ込んだUVレジンが十分に固まったら、上型、下型を取り外し、全体の余分なバリをカットします。
原型をサーフェイサー処理で終わらせていたため、この状態では側面は曇りガラスのような質感になっているため研磨が必要です。
側面土部分の透明UVレジン層はとても薄く、このまま研磨処理を行っていくと土がむき出しになってしまいます。そのため側面全体に透明UVレジンを厚めにコーティングして研磨に耐えられるようにします。側面に凹凸が発生していた場合もここで埋めていきます。



バリ取り、表面コーティングを行ったところ

研磨

楽しい楽しい(遠い目)研磨タイム。一番つらい。
1. 鉄ヤスリで形を成形
2. リューターで鉄ヤスリで削った跡を消す
3. 紙やすりでから研ぎ240, 400
4. スポンジやすりで水研ぎ600,1000,1500
5. コンパウンド粗目,細目,仕上げ目

「前の番手でついた傷を次の番手で確実に消す」「新しい番手にするときに流水洗浄(削りカスを残さない)」を守って、黙々と研磨していきます。コンパウンド細目をかけるまではある程度曇りが残る感じがしています。ただ手触りはピカイチ。
この工程が辛いので、レジンコーティング剤、クリアスプレー使用などを模索中です。UVレジンの劣化を防ぐためにクリアスプレーを使用したほうがいいだろうとは思っています。

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完成


ver.2で試行錯誤していること

  • 透明レジン流し込み時の気泡削減
    • → 減圧脱泡機/加圧脱泡機の使用
  • 研磨で表面を平らにしていく工程で形が変わってしまい、1つ1つの形が安定しない
    • → シリコン型の改善で、表面にUVレジンコーティングの工程をなくす
  • クリアスプレー等による表面保護

国内のArtisanキーキャップが増えるといいな

日本語のArtisanキーキャップに関する情報がもっと増えればいいな。
かわいいキーキャップがほしいーー!!手軽にもっと買いたい!!!!!